青森県むつ市で北海道の地上デジタル・テレビ放送を受信する。

青森県は民放が3局しかなくフジテレビ系の番組を見たい青森県民は地域によって秋田テレビ、岩手めんこいテレビ、北海道文化放送を見ています。
そして北海道のテレビを見る事が出来る所では北海道文化放送に加えてテレビ東京系列のテレビ北海道を見る事も出来ます。 
青森県の下北半島に暮らしている私は今回自宅で北海道のテレビ受信に挑戦してみましたので紹介してみたいと思います。

私は北海道の釧路の生まれで中学の卒業まで住んでおりました。 当然北海道の民放テレビ局の北海道放送(HBC TBS系)、札幌テレビ放送(STV 日本テレビ系)
北海道テレビ(HTB テレビ朝日系)、北海道文化放送(UHB フジテレビ系)をよく見ていました。 
現在北海道には先程の4局にテレビ東京系列のテレビ北海道(TVh)を加えた5局の民放があります。  
そして青森ですが現在青森放送(RAB)、青森テレビ(ATV)、青森朝日放送(ABA)の3局の民放があります。 
津軽海峡を隔てて青森と北海道には民放の数でこのような格差が生じている訳です。
ところで北海道の対岸にあたる津軽半島と下北半島の海岸沿いの地域では主に函館からの電波を受信する事が出来ます。
下北半島では大間から佐井、風間浦、大畑、浜関根、尻屋崎までの限られた地域になりますが20素子アンテナだけで受信が可能です。
ところが海沿いから内陸へ行くほど電波強度が低くなり受信が困難になって行きます。 
私が住んでいるむつ市関根は海岸から内陸へおよそ3km入ったところにありますが函館からのルート上に山があるためにアナログでの放送の時にはノイズ混じりでも
見る事が出来たのが地デジになってからはほとんど見る事が出来なくなったようです。 
樺山地区、関根地区では朽ち果てて函館方向を向いている30素子アンテナを多く見かけます。 また田名部などのむつ市内では二戸方向へ向けられた30素子アンテナを
数多く見る事ができますがごく少数ですが函館へ向けられたものもあります。 いずれもエレメントやリフレクターが取れてしまっていたり現在では使われていないような感じです。
函館からむつ市までは直線距離で70kmぐらいなので函館からのテレビ電波が映りそうですが山々に阻まれて受信は無理のようです。


自宅と各送信所との位置関係

昔からBCLと呼ばれる短波放送を聞く趣味をやっていました。 最近では専用ドングルと受信用ソフトでパソコンがスペアナ付きの高級受信機になってしまうというSDRに
ハマってしまい北米中波やDRMというデジタル放送、Es発生時のFMDXを楽しんでいました。


SDRドングル

R820T2 & SDR+TCXO(温度補償型水晶発信器±0.5PPM)実装カスタムチューナー単品Blue[RTL2832U+R820T2][広帯域受信用][High quality USB-CN][RTL-SDR専用]

昨年11月の末にSDRにUHFのアンテナを繋いでみたらどうなるのだろうと思い20素子のUHFアンテナを屋根に付けて函館方向に向けてSDRのドングルに接続してチューナーの周波数をあらかじめ調べておいた
函館のNHK総合18CHの周波数に合わせてみました。 パソコンに波形が現れましたが電波が弱くテレビが映るまでには至りません。 
函館の各民放も全く駄目です。 アンテナを回してやっぱりここでも北海道のテレビは無理かと思った時に20chで函館のNHK総合よりもかなり強い電波があるのを見つけました。
室蘭の方向に向けると電波が強くなります。 しかもアンテナを上へ傾けるとさらに電波が強くなります。 早速テレビに繋いでみたら映像が出てきました。 
画面右上のロゴに「HTB」とあります。 北海道のテレビ受信第1号は北海道テレビ(HTB)です。  しかも函館ではなくてここから110kmも離れた室蘭です。
室蘭のテレビ送信所は標高199mの測量山にあります。 本来であれば室蘭からの電波が下北半島へ届くはずがないのですが亀田半島の丸山という標高780mの山で
電波が回折する現象(山岳回折)で届いているようです。 それにしても強力な電波です。 ブースターなしで綺麗に映ります。
続いて22chでも映ります。 画面の右上には「HBC」のロゴがあります。 北海道放送(HBC)です。  次に映ったのは33chで「uhb」のロゴがあります。 フジテレビ系列の
北海道文化放送です。 UHBは電波が弱いため30素子のアンテナとブースターを購入して再度受信してみるとレベルぎりぎりですがノイズなしで綺麗に受信出来ます。
さて残りは31chの札幌テレビ放送(STV)と26chのテレビ北海道の2局なのですが波形は確認出来るもののこれがどういう訳か全く受信できず。 
加えて室蘭のNHK総合(24ch)とNHK教育(16ch)も映りませんでした。  渡島向けに室蘭から29chで送信されているNHK総合の函館がチラッと映ったぐらいで
結局HTB、HBC、UHBの3局だけが常時受信可能の状態で新年を迎えました。 試行錯誤を繰り返すうちにアンテナをやや水平にすると31chのSTVが受信出来るようになる事に気が付きますがレベルが受信ギリギリでとても不安定。 
おまけにUHBの受信が不安定になってしまい結局どさんこワイドと言ったローカル番組以外はRABでも見る事が出来るためUHBが最良に映るように調整して2月を迎えました。


仰角を付けて室蘭方面に向けた30素子八木アンテナアンテナ この仰角が室蘭局受信のキモです。


室蘭の方向に角度を付けて向けられたアンテナの先には送電線が見えます。

マスプロ電工 4段導波器UHFアンテナ 30素子 受信チャンネルch.13~34 LS306TMH


SDR#で受信した室蘭局の北海道テレビ(HTB) 20ch (中心周波数(MHz):515.142857 占有帯域(MHz):512.357857 - 517.927857)


SDR#で受信した室蘭局の北海道放送(HBC) 22ch (中心周波数(MHz):527.142857 占有帯域(MHz):524.357857 - 529.927857)


SDR#で受信した室蘭局の北海道文化放送(UHB) 33ch (中心周波数(MHz):593.142857 占有帯域(MHz):590.357857 - 595.927857)

 室蘭局(測量山:標高199m 送信出力:1kw 但し24chと29chのNHK総合は500w)の青森県むつ市関根での受信状況
 物理チャンネル   テレビ局  受信状況  LCT-5による計測結果(30素子アンテナ ブースターなし)
 16ch NHK教育室蘭  受信不可   NHK総合青森局(1KW)の混信による
 20ch  北海道テレビ(HTB)  受信良好  LEVEL(dBuV):34.6 MER(dB):23.8
 22ch  北海道放送(HBC)  受信良好  LEVEL(dBuV):31.8 MER(dB):16.5
 24ch  NHK総合室蘭  受信不可  
 26ch  テレビ北海道(TVh)  受信不可  
 29ch  NHK総合函館  受信不可  
 31ch  札幌テレビ放送(STV)  受信不安定  LEVEL(dBuV):23 MER(dB):11.8
 33ch  北海道文化放送(UHB)  受信良好  LEVEL(dBuV):29 MER(dB):20.5

受信出来た室蘭局(いずれもブースター使用)


20ch 北海道テレビ(HTB)


22ch 北海道放送(HBC)


31ch 札幌テレビ放送(STV)


33ch 北海道文化放送(UHB)

5局ある北海道の民放のうち3つは常時安定受信が出来る様になったもののSTVは受信できても非常に不安定、TVhは全くかすりもしない状況に納得できず
NHKの総合と教育はともかくなんとしても北海道の民放全5局安定常時受信を目標に連日アンテナ調整を行ってみましたが一向に改善されませんでした。
スペアナでSTVよりもTVhの電波が強いのにSTVが映ってTVhが全く映らない事があって26chのTVhは青森の上北局の混信が原因との結論に。
STVだけでもと思いとりあえず専用のアンテナを建てようと思い30素子アンテナとブースターを購入。 アンテナ調整の度に屋根にパソコンやらモニターやらチューナーなんかを上げたり片づけるのが面倒なのでこれを機に
マスプロのレベルチェッカー「LCT-5」を購入しました。
このレベルチェッカーは兎に角素晴らしい代物でこれが大活躍します。
まず電池式なので電源コードを引っ張る必要がない。 屋根の上だろうが林の中だろうが牧草地だろうが片手に持って電波の測定が出来ます。
そしてパソコンのモニターやUSBからのノイズで度々受信不能になる事があったのですがこれはそうなる心配がありません。
チューナーの電波強度の表示はメーカーごとに違うため客観的な評価が難しかったのですがこれだと電波強度から品質まで数値で一目瞭然です。


マスプロのレベルチェッカー「LCT-5」
マスプロ デジタルレベルチェッカー ハンディータイプ 4K・8K衛星放送対応 信号レベル測定器 LCT5

取扱説明書はこちら

マスプロのレベルチェッカー「LCT-5」を手に入れた事でフットワークが良くなったのと丁度寒気が去って暖かくなり屋根の雪が無くなったので屋根に上がってみました。
アンテナとレベルチェッカーを持って屋根の上を歩き回って室蘭のSTV31chの最良点を見つけようとしますが安定受信が可能なレベルまで電波強度が上がりません。
屋根に上がったついでにアンテナを函館に向けてみますが18chのNHK総合が20dBμVを僅かに超えるぐらいの電波強度しか得ることが出来ません。
そこで屋根を諦めてアンテナとレベルチェッカーを持って地上に降り立つ事に。 1.6mのポールに20素子のアンテナを取り付けてレベルチェッカーを見ながら室蘭のSTV31chと函館のNHK総合18chを確認しながら
30cm程雪が積もった我が庭を一日かけて歩き回った結果、函館のNHK総合の電波強度が25dBμVを超える場所を発見しました。 しかもその場所はアンテナの高さが地面から1.4mの所です。 
普通アンテナが高い位置にある方が電波の受信に有利だと思い屋根の上とか兎に角高い所ばかりを考えていたのが盲点になっていたようです。 アンテナを取り付けたポールを雪の上に置いた時のレベルチェッカーの電波強度が
<18dBμVを表示していたのがポールを固定するために押し込んだ際にアンテナが20cm下がった瞬間にレベルチェッカーの電波強度が25dBμVを超えたためこの時初めて函館からのテレビ電波の強度のピークが地上すれすれにある事が分かりました。
それにしてもこんな低い所に電波強度のピークがあるとは思いませんでした。 これじゃ高い所ばかり探しても見つからないはずです。
この後敷地の端から端までくまなく電波強度を測定した結局、我が家の庭の東側に最も電波が強い場所を見つけたのでそこに30素子アンテナを設置しました。


雪を掘って地面から1.4mの所に設置された30素子の八木アンテナ。
あまりにもアンテナの高さが低いのでこれで本当に北海道から飛んでくる電波が受信出来るのか心配になります。
ところがマスプロのレベルチェッカー「LCT-5」の表示した結果に驚愕します。


14ch函館のNHK教育はなんと36.9dBμVとぶっ飛びの数値が!


15ch札幌テレビ放送(STV)も堂々の30dBμV越えでMERも30.5dBと余裕の復調レベルを達成!


17ch北海道放送(HBC) 室蘭局に加えて函館局も常時安定受信を達成!


18ch函館のNHK総合も見られるようになりました。 


19chテレビ北海道も常時安定受信を達成しました! 


23ch北海道テレビ(HTB) 同じチャンネルの上北烏帽子局の混信による受信障害により復調ならず。。。但し室蘭局が受信出来ているので問題なし。


25ch北海道文化放送(UHB) こちらも同じチャンネルの上北烏帽子局の混信による受信障害により受信レベルがあともう一歩及ばず。。。但しこちらも室蘭局が受信出来ているので問題なし。

アンテナからテレビまでの同軸ケーブルの長さが40mあるのでブースターを使用していますがTVhが19chで常時安定受信出来る様になり室蘭では受信不安定だったSTVも15chで常時安定受信となりました。 
加えて18chのNHK総合函館と14chのNHK教育函館も常時安定受信が可能となりました。

              函館局(函館山:標高334m 送信出力:1kw)の青森県むつ市関根での受信状況               
 物理チャンネル   テレビ局 受信状況  LCT-5による計測結果(30素子アンテナ ブースターなし)
 14ch NHK教育函館 受信良好   LEVEL(dBuV):36.5 MER(dB):26.8
 15ch 札幌テレビ放送(STV) 受信良好  LEVEL(dBuV):31.3 MER(dB):26.6
 17ch 北海道放送(HBC) 受信良好  LEVEL(dBuV):31.1 MER(dB):>32
 18ch NHK総合函館 受信良好  LEVEL(dBuV):29.7 MER(dB):23.4
 19ch テレビ北海道(TVh) 受信良好  LEVEL(dBuV):27.3 MER(dB):21.2
 23ch 北海道テレビ(HTB)  受信不可  LEVEL(dBuV):22.6 MER(dB):8
 25ch 北海道文化放送(UHB)   受信不安定  LEVEL(dBuV):23.7 MER(dB):15.4


14chNHK教育函館


15CH札幌テレビ放送(STV) 室蘭局は受信が不安定でしたが函館局はこの様にバッチリ映っています。


17ch北海道放送(HBC) 室蘭局も安定して受信出来ています。


18chNHK総合函館 北海道だけでなく下北の気象情報もサラッとですが放送してくれます。


19ch テレビ北海道(TVh) キー局のテレビ東京を含めて全国に6局しかないTXNネットワークの1つ。 室蘭局は同じチャンネルで上北烏帽子局から送信されているRAB青森放送の混信による受信障害で
見る事が出来なかったのですが函館からの電波をしっかりと捉える事が出来ました。

以上、青森県むつ市関根での北海道の地デジ受信について紹介いたしました。
次は3mのパラボラアンテナを設置してロシアのテレビ放送の受信について書きたいと思っております。

by Black Watch
2021.2.24

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